ep.2 宮古 恋

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 その後も続いた恋の説明によると、羽は三日間で一枚無くなるのだと言う。 所持した羽の寿命と言う訳ではなく、所持者の命を長らえさせる為に力を使い、消耗し切って消えるのだ。  そして、奇跡の力はそれだけに留まらない。 羽は何でも願いを叶えられるのだ。 食料を望めば食料が。 衣服を望めば衣服が。 金を望めば金が手に入る。  但し、死者同士の闘いの際に武器を望むと、問答無用で大鎌になると言う。  「物だけじゃなくて、地位も願えば叶えてくれるよ。 あたしはそれで今、学校に行けてる。」  恋は少年に微笑みかけた。 その微笑みには、ほんの少しの切なさが混じっていて、満たされない不完全な幸せと言うものを表していた。  羽の力で物理的には何の不自由もなく学校に通えているとは言え、精神的には足りない物が多い。 友人と遊び歩く時間は取れないだろうし、恋人を作る事も難しいだろう。 そして、何より。  「でも、家族の元には戻れなかったなあ……。」  家族。 信頼出来る、帰る場所が、無いのだ。
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