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「あ。」
少年が思わず声を上げる。 恋はすぐさま少年の視線の先を見た。 空にたゆたう、雄大な雲。 それは紛れもなく、探していた羽だった。
「羽はっけーん! テンコナイス!!」
「え、アレただの雲じゃ」
ないんですか、と彼は続ける事が出来なかった。 恋が届く筈も無いのに、化粧品用の容器のキャップを開け、口を雲に向けながらその場で跳ね始めたのだ。 周りに人がいないからと言っても端から見たら完全に変人である。
そして何より少年を閉口させた理由は恋の下半身にあった。
彼女は曲がりなりにも女子高生だ。 お洒落に気を使う年頃、つまりはスカートを短く巻き上げているのである。 プリーツのミニスカートが跳ねれば、当然。
「恋さん。 いくら何でも、モロに見えると、その。」
視線を逸らし、言葉を選びながら少年が言うと恋は、ばつの悪そうな顔をして「ゴメン、あんたが男だって忘れてた。」と言った。
「俺を何だと思ってたんですか。」
少年の顔が引きつる。 恋は笑ってごまかし、「どうしよっかな、届かないし」と悩み始めた。
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