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やれやれ。 そう呟いて、少年は恋の手から容器を取ると、蓋を取って雲に向かって天高く真っ直ぐに放り投げた。
投げられた高さは大体三、四メートル位だろうか。 雲には到底届かない。 しかし、少年にとってそんな事は関係なかった。
「入れ。」
少年が小さく呟く。 命令に従い、雲は形を崩して容器に収まった。 落ちてきた容器をキャッチすると少年は蓋を閉めて恋に渡した。
「はい、恋さん。」
「………ありがと。」
恋が微妙な顔で少年の顔を覗き込む。 少年が首を傾げると、彼女は唸りつつ言った。
「羽を呼べるのはシノだけだと思ってたんだけど。」
その瞬間、少年の顔が露骨に引き吊った。 いや、その、と動揺しながら、少年は「念じてただけで呼んだ訳じゃ」と否定する。
「……って、緋那ちゃんだけ何ですか。 羽を呼べるの。」
少年はとりあえず、一番最初に見た緋那の方法を真似したのだ。 手の届かぬ所にあった羽に、小瓶の口を向けて「おいで」と呼んだ、あのやり方を。
少年は自分でも出来ると言う確信があって真似した訳だが、まさか他の収集者達が出来ないとは思っていなかった。
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