ep.2 宮古 恋

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 「うん。 シノは何か、羽に好かれてるって言うか。 羽がすごい素直何だよね。」  羽に意思があるとは思えないけど、と恋は続けて言った。 少年が呟く。  「羽に意思、ねぇ。」  「でもこれ考えてみれば不思議だよね。 奇跡の力とか、意思とか。 神さまは『天使の羽だ、何が起きても不思議ではあるまいよ』とか言ってたけどさ。 毎日毎日何枚も何枚もどうやって手に入れてんだか。」  「そりゃゴミだしね。 簡単でしょう。」  少年はそう言って黙った。 恋は追及しようとしたが、ふと気配を感じ、足を止める。  「恋さん?」  「……逃げるよ。」  少年が聞き返す間もなく、恋は彼の自転車に跨り、漕ぎ出した。 少年は訳も分からず急いで荷台に飛び乗る。  「恋さん、どうしたんですか、いきなり!!」 荷台の上で片膝を立てて荷台の端を掴みながら叫ぶ少年に恋は叫び返した。  「リーマンが来た!」  リーマン。 恋が先程言っていた戦うタイプの収集者だ。  少年はバランスに気を付けながら辺りを見回す。 すると、民家の屋根の上、大鎌を持った男が追い掛けて来ている姿を少年の目は捉えた。 ただ、逆光で顔が良く見えない。  距離はどんどん詰められている。 もう追い付かれる。 少年がそう思った瞬間、恋が角を曲がった。
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