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ガクン。 正にそうとしか言いようがなかった。 置いて行かれるような感覚を越えると、風が頬を切る。 前を見ればそこは下り坂で、下り切れば大通りだ。
このスピード。 あの交通量。 少年の頭に最悪のシナリオが浮かぶ。 このまま行けば、自転車は曲がり切れず車道に出て――
「恋さん、ブレーキ!! このままだと死にますっっ!!」
「大丈夫! 怪我しても羽があるから!!」
「それが俺に効くかは分からないでしょうっ!! それに即死だったらどうすんですかぁっ!!」
問答している間にも、大通りへ進む速度は上がって行く。 恋はT字路のすぐ手前でやっとブレーキをかけた。
しかし、もう遅かった。 スピードが上がり過ぎていたのだ。 下がらぬ速度。 軋むブレーキ。 それは安全地帯上で曲がりきるのは不可能である事を恋に知らせていた。
このままならば、跳ねられて倒れるか、倒れて轢かれるか、だ。 どちらにせよ重傷は免れない、と恋が覚悟した時、思っていたよりもずっと早く、自転車が倒れた。
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