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「ごめんね、巻き込んで。」
恋の謝罪に少年は「別に。 平気ですよ、こんなの。」と答えて、彼女に手を差し伸べた。
恋はその手を取って立ち上がる。 裏返ったスカートの裾を直す彼女に少年は言った。
「もう帰りませんか。 暗くなったら危ないですよ。 送りますから。」
恋は「おっ、テンコ君格好いー♪」と軽口を叩いた。
「じゃあ、お願いしちゃおっかな。」
先程とは打って変わった真剣さ。 僅かに怯えの混じるその声に、少年は頷いて応えると彼女に問う。
「家、どの辺ですか? なるべく人通りの多いちょっと複雑な道選ぶんで。」
羽探しも兼ねて、ね。と続けた彼に恋が答えた場所は、住宅地から少し外れた、駅近くのアパートだった。
「立地が良かったんだ。 学校まで自転車で二、三十分だし。 助けを呼べばすぐ来てくれるし。」
彼女の説明に少年は頷いた。 自分の記憶が正しければ、そのアパートの入居率は高い。
数部屋を除いて全てに人がいるのだから、攻め入られたとしても助けを求めて一分耐え凌げば必ず誰かがやって来るだろう。
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