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少年は溜息を一つ吐いた。 こんなに探し回ったのに、少女に会えなかった。 やはりあれは夢幻だったのだろうか。
初詣の時以外滅多に人が訪れない神社にまでやって来たのに。 もう一度溜息を吐いて、少年は社を見た。
「………?」
彼は首を傾げた。 参道の丁度中心に何やら光る物がある。 少年は近寄って行った。
「羽……?」
思わず拾い上げた光る物は、白く儚い羽だった。 この地球上に生息する鳥類の物ではない。 明らかに飛ぶには不向きな形である。
そう言えば、彼女はこれを集めていた気がする。 これを持っていれば、彼女にまた会えるだろうか。 少年がそう思ったその瞬間。
「その羽頂戴っ!!」
一人の少女が社の屋根から大鎌を振り上げ降りてきた。 鎌の切っ先は空中で少年目掛けて振り下ろされる。
「う、わ!!」
無我夢中で避けた少年のすぐ横に、少女は降り立った。 昨夜の少女とは違う、肩ほどまでのポニーテールを揺らすセーラー服姿の少女である。 小型のメッセンジャーバッグを下げた彼女は、地面に突き刺さった大鎌を引き抜いて、それの柄に抱き付くようにして腰の抜けている少年を見た。
「避けたか。 見た事ない顔だけど、その羽が見えるって事はあたし達と同じでしょ?」
「は、え?」
少年の間抜けな返事に、少女は笑いながら鎌をゆっくり振り下ろし、少年の首筋に当てて告げた。
「もう一度死にたくなければその羽頂戴。」
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