ep.1 出会い

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 さぁ、と促して少女は少年に右手を差し伸べた。 少年はその手を取り、立ち上がるものの、ミヤに対しては警戒を解かない。  少女はミヤを呼ぶと、鎌から手を離した。 大鎌が倒れながらも淡い光に変わって行く。  ミヤは口を尖らせ、同じように鎌から手を離した。 ミヤの鎌も光に変わって行く。 二つの鎌は地面に伏す前に形状を崩し、光となって虚空へと消えた。  さあ。とまた促され、少年はミヤに羽を渡した。 ミヤはそれを受け取ると、呟く。  「……ありがと。」  彼女は羽を化粧品用のプラスチック製容器に入れるとそれをポーチに入れ、バッグに入れて、踵を返し言った。  「シノ。 あいつらに気を付けなよ。」  ミヤが去った後、少女も去ろうとした。 少年はそれを止める。  「待って。 君、名前は? 今の子は――君達は一体」  「篠崎 緋那。 さっきの羽にはもう触っちゃ駄目。 見えないフリしなさい。 さよなら。」  そうして一方的に会話を切り上げ、緋那は今度こそ去っていった。  「篠崎、緋那。」  少年は少女の名を呟いて、石段を見る。 緋那の姿はもうなく、少年はただ、その石段を降りて行くしかなかった。
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