ep.2 宮古 恋

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 あの事件から一週間。 その間も、少年は羽と緋那を探し回っていた。 忠告の一つや二つで諦める程、少年は潔くはない。 彼は自転車に跨り、今までの統計から桜をルートに織り交ぜて町を走り回った。  「緋那ちゃん、いないなぁ……。」  呟いて、溜息を吐く。 コートを纏った少女ならばすぐに見つかりそうなものだが、やはり動くだけありなかなか見当たらない。  あの鎌から言って普通の人間ではなさそうであるし、もしかしたら見えなくなる事も出来るのではないだろうか。 そう思いながら、また彼はペダルを漕いだ。  走り回って疲れた少年は、近くにあった公園で一休みしていた。 汗をかいて渇いた体に冷たい水が染み渡る。 五月の始め、晴れの昼間は、もう初夏と言っても過言ではなかった。  「あれ、こないだの子じゃん。」  聞き覚えのある声が背後から飛んで来る。 振り返るとミヤが先週と同じセーラー服、同じメッセンジャーバッグでそこに立っていた。  少年がバックステップで距離をとる。 ミヤは苦笑いしながら両手を見せて彼に言った。  「そんな怯えなくてもよくね? あたし今は普通の高校生だし。」  少年は眉間に皺を寄せたまま、二歩だけ近寄る。 いつでも逃げられる間を空けて、何用かをミヤに問い掛けた。
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