一点目

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 朝食時、食パンにマーガリンを塗っている草馬に母が冊子のようなものを持ってきた。  「草馬、あんた進学校が良いのよね?」  草馬が手を止めた。進学の話には敏感だ。  「そうだけど」  母が冊子を広げて、草馬に見せた。  「ここ、どう?」  母が高校の名前が書かれた所を指差した。  「…………私立仲義高校? いや、私立は……ちょっと」  授業料を考えて、公立のほうが絶対にいい。そう草馬は考えていたが、母は首を振ってパンフレットの最後のページを広げた。  「廃校になるところだった高校を、艮さんが買い取ったんだって。草馬君たちなら授業料はもらいませんよ-だって」
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