一点目

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 草馬はかじっていた食パンをまた置いた。  「授業料免除って……お母さんはそれにつられて私にこれを見せたのか」  授業料免除なんて話に主婦が興味を示さないはずがない。  母は草馬の言葉を聴いてか聴かずかこう続けた。  「良い話でしょ?受けてみなさいよ」  「………………新設校、ねぇ」  志望は公立進学校だったが、ここに来てとんでもない話が出た。  「でも、大学受験にはどうなのさ」  草馬がそう尋ねるのを待っていたかのように母が話した。  「なんてったって艮さんだからねぇ、大学なんてこれ以上なく有利になるわよ」
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