プロローグ

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次の授業は英語だ。英語は、いつもCDのリスニングから始まる。…正直、CDじゃなくて先生のスピーキングにして欲しかった。そうすれば、必死になって習得した読唇術でなんて言っているか分かるのに、先生は楽をしてCDを使う。 「はい、リスニングは終わりました。次は単語です。リピートアフタミー。」 俺は、先生の口の動きを真似して練習している振りをする。前どうしたらいいか分からずにポカンとしてたら、ものすごい叱られた。口だけは動かせと言われたので、次の授業からは口パクした。事実、それからは怒られない。 「…では、今日は9日だから9番の如月君。」 …今日という日をどれだけ憎んだ事だろうか… 話せないので、手元のスケッチブックに答えを書いて掲げる。先生はそれを見るとひとつ頷き、 「おしいですね。スペルが違います。」 赤ペンを手にこちらにやって来る。掲げたスケッチブックの、sをthになおされた。…なんか恥ずかしいよね。こういうの。 「………はい。今日はこれで終わりです。事故の無いように気をつけて帰ってください。」 SHRが終わると、俺は荷物を確認してから学校を出た。
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