11人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうでしょうかね、食いしん坊さん」
私がソファーに座っているとその前に座り込んで弥生さんが上目使いで話しかけてきた。
「……お、美味しいです」
「くっ、ふっ……本当に美味しそうに食うねあんた」
その後、このパンの説明をしてくれた。
自分が朝早く起きて工場でパンを焼いて、具材を切って一個ずつ手作りしてること。
だから、値段は少し高いけど美味しいこと。
パンを作っているときはピアスも化粧もマニキュアも取っていること。
本当にパンを作るのが好きなんだと思った。
「パン作るの……好きなんです……ね」
私はそんなやりがいとか、やりたいこととか、今は全く考えもつかない……。
だから、弥生さんが凄く大人に見えた。
「うん、大好きだよ」
本庄さんとはまた違った美人な人だと思った。
「凄く……かっこいいと、思います……」
「…………なんだよ、めっちゃいい子じゃん、この子」
「だから、弥生さんが全て悪いんですってば」
「そうなの?」
くすっ。
楽しいな……。
楽し過ぎて今までのことが嘘だったような気すらしてしまう。
「お、笑った」
「笑うと可愛いでしょ?千夏ちゃん」
「あぁ、まぁ私には負けるがな!!」
「はいはい」
私ってそんなに、笑ってないかな?……うーん。
「……?」
「でも、天然ぽいよな」
「ぽいでもないですけどね」
「おい、お前たちもう昼休み終わるぞっ」
私達は同時に時計を見た。
「「あっ!」」
そして、本庄さんはすぐ走り出した。
「パ、パン!」
「残しといてやるから、行ってこい」
「ほ…ほんとですか…?」
「可愛いなぁもう!!ほらまじだから行ってこい!」
私は渋々パンを残して部屋から出た。
「さて…………そういえばあの子何個くらい食べるんだろ……うーん10個くらい残しとくか?」
私はあのパンのファンになった……。
最初のコメントを投稿しよう!