死神、神無月の憂鬱

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「浅葱」 広い部屋の中で、呑気にも珈琲を飲んでいる浅葱に声を掛ける。 彼女とはぼくが死神になった時 からの付き合いで、それなりに 信頼を置いている。 …まあ、女装をさせてくるところは好きじゃないが。 「ん、どうかしたか?」 浅葱は珈琲を置いて真っ直ぐに ぼくを見てきた。 綺麗にグラデーションを描く瞳は見ていると吸い込まれそうだ。 「相談があるんですが…」 「いいぞ。とりあえず立ってんの疲れるだろうから座りなよ」 自分の真正面の席を指して浅葱が薄く笑みを浮かべた。 その行為に甘えて席に着く、それとほぼ同時に浅葱は席を立った。 何があったのか疑問に思うと、 浅葱はカツカツとヒールの音を 立てて珈琲を入れる機械の前に 立った。 よくファミレスとかにあるアレだ 「神無月、珈琲飲めるか?」 「え、あ、はい」 ぼくの返事を聞いて、浅葱は機械のスイッチを入れた。 白い珈琲カップに焦げ茶の液体が注がれる。 それがいっぱいになると浅葱は カップを持ってこちらに来て、 ぼくの前に置いた。 「あ、ありがとうございます」 「いいっていいって。 で? 神無月が相談なんて珍しいな。僕でいいなら聞くよ」 珈琲を一口含んでから浅葱はそう言った。
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