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あずさにとっては、待ちに待った展開に持ち込む事ができるという事で内心、ウキウキしていた。
「催眠術じゃないよ。田城君、明日から女子の制服から運動服に着替えるようにしよう。着替える時は私と一緒。あと、ブラもする。そうする事で、自分は女の子なんだと暗示をかけるの。また、そうなれば異性と一緒に踊っているという恥ずかしさもなくなるだろうし。」
裕子はあずさの提案に対し、否定も肯定もせず、沈黙していた。
薫にとって、この提案は受け入れ難い。確かに今の状況に対する自分の意識をどうするかは重要かもしれない。
しかし、明日から女装開始なんて、恥ずかしくて堪えられない。
ましてや好きなあずさと一緒に着替えるなど、暴走したらどうするのか。あずさの考えが浅いのか、自分が人畜無害と思われているのか。ともかく、どう考えても答えはノーだ。
「沈黙はイエスと受け取っていいのかな?」
あずさが薫の顔をのぞきこむ。
薫は不意打ちに顔を赤面させたが、ノーの回答をした。
「じゃあ、賭けをしよう。前奏部分を1人で踊ってみてよ。もう5回はやったからね。つまらずにいけたら、今日のところは勘弁してあげる。若干の間違いは許してあげる。裕子もそんでいいよね。」
「最高の出来にするためなら、私は受け入れるよ。」
あずさと賭けの対決。結果は…
「じゃあ、制服着てみて。」
あずさが自分の制服を指差した。
薫はあずさの勝負に敗北した。
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