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「知り合いに見つかりませんように」
決断した答えは見に行く。我ながらどこからそんな勇気が出たのかは分からない。
薫があずさと共に女子の制服姿で外に出ようとすると、
「薫ちゃん、ちょっと待ち。」
裕子はそう言うと、自分のハイソックスとローファーを差し出した。
「ハイソはあげる。すね毛を目立たせない為にもね。それに男物のスニーカー履いていたらおかしいでしょう?」
靴はサイズが合っていないので、きつかった。何とか履けたが、足が痛い。
「じゃあ、ちょっと行ってくるね」
あずさのお気楽極楽発言は普通ならカチンと来るが、薫のあずさに対する好意がすべて薄めていた。
さて、数分後
薫はトイレの全体鏡に映っている自分の姿が信じられなかった。
ちょっとボーイッシュな女の子という感じだった。俺って、服装を変えただけで、こんな感じになるのか。ちょっとショックだった。
横で違うクラスの男子2人程が薫をチラ見して、トイレに入っていった。去り際に「お前どっちが好み?」という呟きを
聞き、ばれてなさそうとホッとした。
そこで緊張の糸を切るべきではなかったのに…
「徳山さん、どうしよう。トきイレ行きたくなってきた。ヤバイかも。」
あずさは困った顔をした。普通なら男子トイレだが、別の男子が今入っていったばっかりだ。男子なら短いだろうけど、いつまた入って来るか分からない。
あずさは裕子がトイレ発言をしていた時、面白いと思っていたけど、いざとなるとそんな気持ちでなくなっていた。
「もう、やばい?」
あずさは小声で聞く。
「戻って着替える余裕はないかもしれない」
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