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ーー夕暮れの街。
人も疎らな、街中の街灯の下を一人の少女がトボトボと歩いている。少女は栗色の艶やかな腰まで伸びた髪を夏風に靡かせ、レンガ造りの道をただ歩く。
淡いレトロなグリーンのワンピースの裾が風に揺れ、少女の綺麗な顔を夕日が照らすが、その大きな瞳は涙を溜めている。今にも瞳からこぼれ落ちそうな涙を堪えるかのように少女は小さく鼻を啜った。
歩いて、歩いてーー
夕焼けの空が徐々に夜空に変わる頃、辿り着いたのは、とある看板の前だった。
「……えっ」
少女の口から微かに声が漏れた。
「うそ、ここは……」
信じられない物を見るかのように、元から大きな少女のブルーの瞳は、より一層大きく開かれ、その場に立ち尽くす。
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