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―ぱしゃんっ
「あ」
ソファから上げた俺の間の抜けた声と、テーブルに広がるカラフルな色が混ざった水
その先にある、くまのぬいぐるみ
「!!」
ゆうくんの目が見開かれる。
「やだっくまさんよごれちゃうっ」
彼の手が伸ばされたときには
「……ゎ…」
くまさんの毛は、しなしなになってしまっていた。
ゆうくんがくまさんをテーブルの椅子に座り込みながらぎゅっと抱き抱え、震える声で呟く。
いとーさんからもらっただいじなくまさんなのに、と
小学校一年生に上がった彼に、入学祝いとしてプレゼントしたぬいぐるみ。
まだまだ大きいランドセルと帽子、ぶかぶかのきちっとした制服で帰ってきたゆうくん。
包みをあげたら彼は目を輝かせ、中身を見たら、大層嬉しそうにぎゅっとくまさんを抱き締める。
『こらっゆう!お礼しなきゃ
こういうときどうするんだっけ?』
陽子さんの声にきらきらした顔をぱっと上げて、俺に近づく。
そして
ぎゅうっ
『!』
『ありがとっ!!
いとーさん』
ってお母さんには見えないように右頬にキスしてきた。
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