2.黄鈴学園

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あのあと最速で学園に向かったさ。切れる息も高鳴る鼓動も押し殺して、最善を尽くしたさ。 だから仕方ないよね?努力はしたんだし。 「お前は初日から遅刻とはどういうことだ?」 「すみません」 いやぁ、入学式すら終わってたときはさすがに焦ったよね。時間の過ぎる早さってのを初めて実感したよ。 昇降口も間違えて、生徒昇降口じゃなくて正面玄関から飛び込んじゃったよ。 おかげさまで言い訳する暇もなく職員室へ直行ってわけだ。 「で?なんで遅刻したんだ?素直に言ってみなさい」 「自殺寸前の女の子助けてました」 「先生をからかっているのか?」 ひどいよ、さっきから。ずっとそう言ってるのに信じてくれないんだ。 まあ俺が仮に先生だったとしても信じはしないだろうけどさぁ。 「そうだな、反省文でも書いてもらうか」 反省文!?いつの時代だよ! 「5枚で勘弁してやるか」 「5枚!?ちょっと待ってよ先生!」 しまった。思わず敬語を……。 「10枚な」 「そんなぁ……」 完全に諦め、10枚をどう書き込むか構想を練り始めたときだった。 勇者が現れたのは。 「上條せんせー、もういいじゃないっすか。こいつも反省してるようですし」 理不尽に俺をしかりつけ、反省文10枚という地獄を押し付けようとしたのは上條っていうんだな? 一生忘れん。 それにたいしてこの先生はなんだ? 勇者?天使?救世主? もうなんでもいいや、反省文さえ逃れられれば。 「輪湖(ワコ)先生、あなたは甘いんですよ。このくらいしなきゃまた繰り返すことになりますよ」 「そんときはそんときですよ。行くぞ、えーっと明智くん?」 「あけはまです」
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