プロローグ

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決して戻ることも止まることもなく、ただ流れゆくだけの時間。 俺たちはその時間と共に、ひと時も立ち止まることなく前へ進まなくてはならない。 例え過去に後悔があったとしても、時の流れというものに逆らうことはできないのだ。 だから人々は口を揃えて言う。 過ぎ去った過去よりも眼前に広がる無限の未来を大切に。 と。 だが、これは綺麗事だ。 人は誰もが戻ることのない過去に縛られ、そして立ち止まる。 心残りがいつも人の前進を阻んでいるのだ。 俺、朱浜海斗(アケハマカイト)もその中の一人。 訳あって今年、谷岡市に越してきた。 これをきっかけに、この新天地で新たなスタートを切ろうって魂胆だ。 もし心の奥底に抱えて込んでいる未練を人々が乗り越えたとき、俺たちはいったい何色の未来を描き上げるのだろうか。 真っ白になってしまっているキャンバスはいったいどんな色彩で輝きだすのだろうか。 俺の描く物語はいったいどんなものになるのであろうか。 見えない明日に気持ちが後ろ向きになりながらも、俺は 未知の未来へ恐る恐る一歩を踏み出してみるだ。 .
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