54人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はトーストにマーガリンを塗り込む。均等の厚さになるように……と。
「几帳面か!」
「そうだよ。悪かったな」
親父はマーガリンをどっさりと取り、トーストに叩きつけると、次にイチゴジャムを同じように乗せた。
「長生きしねぇぞ」
「うるせーな!これが俺の食い方だ。誰にも文句言わせねぇ」
「拓郎さん、ちょっと控えたらどぉ?」
「はい。わかりました」
早速折れてどうする。
まあ、母さんの笑顔に勝てるやつはそうそういないけどな。家に来た友達も赤面してたし。
てかなんで母さんはこんな男、好きになったんだ?こんなただうるさいだけの男よりもっといい人がいるだろうに。
人類の七不思議の一つに登録してもオッケーだな。
「今、失礼なこと考えてただろ?」
「まあな」
「そこは否定しろよ」
朝食を食べ終わると、あとは歯を磨いて学校へ行くだけだ。
「海ちゃんももう高校生なんだねぇ」
「今日いきなり女連れ込んでくれるんじゃねぇぞ?」
「入学式そうそう、そんなことが起きるか!」
てか、親父。時間大丈夫なのか?
とっくにいつも家を出る時間を過ぎてるぞ。
まあ、いっか。
「って、もおこんな時間ではないかぁ!」
あ、気づいた。
今さらもう遅いな。
「ちえさん、行ってくる。
海斗、女の一人や二人連れ込んできて見やがれ!」
「いってらっしゃ~い」
「さっさと消えてしまえ」
ドタドタと壁にぶつかりながら親父は家を出ていった。
「ほら、海ちゃんも遅刻しちゃうよ」
俺を急かすようにスクールバッグを押し付けてくる。
「わかってるよ。入学式から遅刻なんて勘弁だからね」
スクールバッグを受け取り、俺は母さんに押し出されるようにして家を出た。
最初のコメントを投稿しよう!