1.空色の髪の少女

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俺はトーストにマーガリンを塗り込む。均等の厚さになるように……と。 「几帳面か!」 「そうだよ。悪かったな」 親父はマーガリンをどっさりと取り、トーストに叩きつけると、次にイチゴジャムを同じように乗せた。 「長生きしねぇぞ」 「うるせーな!これが俺の食い方だ。誰にも文句言わせねぇ」 「拓郎さん、ちょっと控えたらどぉ?」 「はい。わかりました」 早速折れてどうする。 まあ、母さんの笑顔に勝てるやつはそうそういないけどな。家に来た友達も赤面してたし。 てかなんで母さんはこんな男、好きになったんだ?こんなただうるさいだけの男よりもっといい人がいるだろうに。 人類の七不思議の一つに登録してもオッケーだな。 「今、失礼なこと考えてただろ?」 「まあな」 「そこは否定しろよ」 朝食を食べ終わると、あとは歯を磨いて学校へ行くだけだ。 「海ちゃんももう高校生なんだねぇ」 「今日いきなり女連れ込んでくれるんじゃねぇぞ?」 「入学式そうそう、そんなことが起きるか!」 てか、親父。時間大丈夫なのか? とっくにいつも家を出る時間を過ぎてるぞ。 まあ、いっか。 「って、もおこんな時間ではないかぁ!」 あ、気づいた。 今さらもう遅いな。 「ちえさん、行ってくる。 海斗、女の一人や二人連れ込んできて見やがれ!」 「いってらっしゃ~い」 「さっさと消えてしまえ」 ドタドタと壁にぶつかりながら親父は家を出ていった。 「ほら、海ちゃんも遅刻しちゃうよ」 俺を急かすようにスクールバッグを押し付けてくる。 「わかってるよ。入学式から遅刻なんて勘弁だからね」 スクールバッグを受け取り、俺は母さんに押し出されるようにして家を出た。
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