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「んで、どうしてあんなことしたんだ?」
相談に乗ってやるって言っちゃったしな。なんかよくわからん娘だけど話だけは聞いてやろう。
少女はすくっと立ち上がる。髪がふわっと揺れる。
身長はそんなに高くない。162の俺の肩くらいまでだから150くらいだろうか。
それにしても髪がすごくきれい。空の青と雲の白をそのまま投影したような、そんな感じだ。
俺を見る。でも焦点があってるかどうかはわからない。
「迅速かつ合理的に考え、建物と建物の間を移動経路として考えたのですが、助走距離と踏み込み、またその角度に誤差があり、結果的に墜落するということになりました」
この娘ばかなの?
「あ、ああ、そうなの。それで?そんなに急いでどちらまで?」
「目的はありますが、目的地はありません」
じゃあ、どこへの移動経路として建物と建物の間を選択したんだよ……。
「目的って?」
「それは極秘事項です」
どこの機関からやってきたんですか。
なんか駄目だ。とても俺の手には負えない。この娘いったい何考えてんのか……。
そういえば、名前聞いてなかったな。それくらいなら答えてくれるだろう。
「俺、朱浜海斗。名前は?それくらいはいいだろ?」
少女は考えるように目を伏せる。
澄みきった青い瞳。もしかしたらハーフか何かなのかもな。
「1C209E」
「いちしーにー……なんだって」
「1C209E,1C209E,1C209E,1C209E,1C209E,1C209E,1C209E,1C209E,1C209E,1C209E…」
「わ、わかったから!1C209Eな。ほら言えてるだろ?」
「人の名前を一度で覚えられないなんて人間失格です」
駄目だ、やっぱり疲れる。
しかも1C209Eってなんだよ。この辺ではそういうのが流行ってるのか?
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