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「……これじゃ、爺さん達のいざこざは当分長引きそうだな」
結果を見届けた後で、カズトもまた羨ましいような残念そうな、複雑な表情で言葉を漏らした。
「あーあ…そーするとどうなんの?」
「俺もメダロットが欲しいだなんて、とても言えないよな」
「うぐ…」
ナオキも似たような境遇のお陰で、メダロットに対して強い興味を向けている。
小さい頃こそお互いにじーちゃん達の張り合いを気に掛ける事は無かったが、じーちゃん達がメダロットを持ち出してから、初めて二人は互いの部屋の窓越しに顔を合わせた。
それからは何となく、シンパシーを感じながらも一緒にじーちゃん達のロボトルをいつも観戦していた。
「こうなったら親に内緒でこっそり買ってしまおうか…」
「えっ? で、でも高っけーんだぜ?
メダロッチに、ティンペットに、メダル、パーツ一式ともなるとさぁ…」
「望遠鏡とか、新型のPCとかも欲しかったけど…貯金してた二年分のお年玉を引き出そうと思ってな」
「マジでか」
「あぁ」
(お年玉、俺よりももっといっぱい貰ってるんじゃ…!?)
ナオキは絶句した。
お年玉の額面ではそさほど差はないのに、先に使ってしまった後悔よりもカズトの懐事情を訝しむあたり、彼は反省もしなかった。
「…じ、実はさ! 今まで秘密にしてたんだけど、俺ももう予約入れてあんだよなー!」
やはり爺孫揃って、血は争えなかった。
思わず張り合ってホラを吹いてしまったのだ。
「なんだよー、そうだったのか! それなら気がラクになったな、二人で抜け駆けすれば怖くないぜ」
「あ、あぁ…んだな」
「いやー楽しみだよな、俺はこれからカタログ見るから、届くのは後になりそうだけど…。
メダロット買ったら絶対ロボトルやろうな?」
「え、いや、やっぱり…あっ!」
そう言って、カズトはナオキが弁解するより先に窓を締めてしまった。
後には冷え切った空気と、静寂が残った。
「う、うわー、ついつい言っちまった…!
まさかカズトの奴が先にメダロッターに…だなんて…」
あまりにショックが大きかったので、ナオキは約束の事も忘れて、今は焦りしか頭に浮かばなかった。
…つくづく反省をしない男である。
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