第一章・前編

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てろれろててんっ てれられられーん♪ 「いらっしゃいませー」 自動ドアをくぐると、聞いた事のあるチャイムと共に店員の歓迎を受けた。 そんな訳で、最近この田舎町に出来上がったと有名な、唯一のコンビニまでホイホイやって来たのだ。 (おっ、ボン○ン新刊出てる…明日の学校帰りにク○ちゃん立ち読みしよ) 雑誌コーナーをチェックしつつ、店内の外側を回って生鮮食品コーナーへ。 「あった、これだな」 見ると、まるでナオキの来訪に備えてキープされていたように、拓けたスペースに一つだけ卵パックが置かれていた。 「あぶね、無事ゲットだ。これで任務達成(ミッション・コンプリート)!」 何だか得したような気分で、卵パックを両手に抱えて軽やかな足取りでレジまで向かう。 と…レジ前で大きなPOPが設置され、大々的な宣伝をしている陳列コーナーに、ナオキの視線は強く引き寄せられた。 「おおおぉぉ…! すげぇっ…これ…、週刊メダロットでやってた、初期限定品の…!」 数種類のパーツが包装されてバラ売りになっている中、それは全パーツをティンペットに装着済みの、雄々しい立ち姿を見せていたのだった。 前のめりになって至近距離で食い入るように見詰めるが、紛れもなく正真正銘のP0-型に違いない。 しかも、宣伝文句を見ると、普通なら専門店で調整を行ってから販売されるティンペットまで、メンテ済み状態でのセット販売らしい。 「正直、こんなところで見られるなんて思わなかった…! うわー、こんなチャンス、これからの生涯にあるかどうか分からないってのに…。 でも、カラーが青いけど、これはPO…何番機だっけ? テレビで見たのと一緒ってのは違いないけど…」 まさに喉から手が出るほどに羨望の眼差しを注ぎながら、メダロットの全身のディティールを眺め、考え込む。 能力が未知数な分、想像は頭の中で無限大に広がり、しばらくナオキに時間の認識を忘れさせた。 「ちょっと今の話…、このメダロットがテレビに出てたって本当ロボか?」 いつからか、ナオキの後ろに客が並んでいた。 「あーすいません…そっすよ、今週の週刊メダロットで、こいつは限定品だ…、って…」 思いっきり視線を遮る立ち位置になっていたので、慌てて屈みながら横に避ける、が。 「…ロボ?」 変な語尾が気に掛かって思わず後ろを振り返ると、今度はその人の風貌を見て、言葉が浮かばなくなった。
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