第一章・前編

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「ぎゃーっ、マジだったッスー! セレクト隊員さーん、ヘルプミー!」 「あ…ちょっ! 決して動くな、観念して抵抗を止めろ、さもなくば撃つ…ってセリフを言う前に動くんじゃないロボ!」 『レンジ範囲外 射撃パーツハ 装備シテナイ ロボ』 「お前は黙ってるロボ!」 コントを繰り広げている間に、店員は町のセレクト隊支部まで逃げ出していってしまった…。 「セレクトの奴らを呼ばれたら厄介だロボ…今のうちにお目当てのブツだけ盗ってズラかるロボよ!」 そういうと、ロボロボ団員はメダロットと一緒にバラ売りパーツを小脇に抱えて、PO型メダロットを粗雑に持ち出してしまう。 「お…おい! ちょっと待てよ! そのメダロットを一体どうするつもりだ!?」 「どうするって、レアなメダロットは我々ロボロボ団が押収して、世界征服活動のセンベイにしてやるのだロボ! なんたって、このメダロットの為にオイラはコンビニ強盗に踏み切ったロボよ!」 『ソレヲ言ウナラ 尖兵 ロボ』 「この際細かい事はいいのだロボ! ふっふっふ…同僚達も単独行動でこんなにワルい事をしたオイラをソンケーするに違いないロボね」 「……」 なんだろう、コイツは目的よりも人騒がせな事件そのものを楽しんでいるような気がする…。 決して許さざるべき悪事の瞬間に鉢合わせたというのに、緊張感がこの変な空気に分散してしまうような奇妙な感覚を、ナオキは味わっていた。 「って…冗談じゃねー! お前みたいな奴にPO型を使われて、誇り高いネームブランドを汚されてたまるかよ!」 あれほど憧れたPO型がこんな珍妙なヤツの手中に収められているのは、あまりにも忍びない。 その気持ちがナオキを立ち向かわせ、伸ばした片手の指先を箱の包装の出っ張りに引っ掛けた。 「わっ、な、何するロボ!」 「うるせー! 絶対離すもんかよ!」 小学生が片手で引っ張る力と、両手で箱を抱えるロボロボ団員の力が、暫くの間拮抗する。 ……別にどこもおかしい描写などない。 「離せって言ってるロボよ!」 しかし、ナオキの検討も虚しく、より強い力で箱を左右に揺さぶられ、指先を引き剥がされてしまった。 そのままの勢いで後方に転んで、したたかに尻餅を打った。
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