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※しばらくダイジェストでお送りします
「きゃあーーーッ! 茂みの中に踏み込んだらすぐ足元が斜面だなんて、どういう事ですのーーー!?」
「一人でずんずん先に行くからだっての! 俺が行くまでしっかり掴まっとけよ、ただの斜面だからって転げ落ちたら、あっという間に全身スリ傷になっちまわぁ!」
にゃーんっ!
「シュガーちゃんですのね!? 今そちらに参りますわ!」
「いやどう考えても犬の鳴き声じゃねーから!」
「さすがに何もない開けた空き地では、トラブルが起こるなんて事…わぶっ」
「転ぶとかベタすぎるだろ…」
………。
「ぜぇ ぜぇ ぜぇ ぜぇ」
「はぁ はぁ はぁ はぁ」
ナオキは流れに身を任せてしまった自身の、その安易な選択を悔やむしかなかった。
「あのさ…この町に越してきてから、今日でどんくらいになんの…?」
「どんくらいと言う程では…ありませんわよ、つい昨日…越してきたばかりで…」
「だと思った…」
彼女は全く山に歩き馴れていなかったのである。その上、変なプライドからか先行したがる為、始末に負えない。
山道の散歩程度なら…と軽く思う事もないが、本格的にこうして山に入っていくのとは勝手が違うという事を、二人は思い知った。
その環境に辛うじて適応していけている分、ナオキの「地元の少年」という下地は大きかったようだ。
…そして、辺りはすっかり日が落ちて、紅から藍色に染まっていきつつある夜空にはポツポツと星の瞬きが浮かび始めていた。
「一体どういう意味合いで仰ってますの? 私だって元の町ではビルが連なるコンクリートのジャングルの中を駆け回っていましたのに!」
「いやそれとは違うと思うんだがよ」
コンクリートジャングルというと、それはそれでロマンをくすぐられるが、実際は歩きやすいスロープやエスカレーター、エレベーターが道中にいくつも設置されている事だろう。
単にデパートの駐車場にたむろして気取っている程度かも知れない。
「貴方ね、これしきの事で私を見くびらないで下さらないかしら?」
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