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普段人の往来も無いと思う未踏の地に、いかにも何かありげな雰囲気を醸し出す洞窟。
そしてご丁寧に、シュガーちゃんはその目の前までナオキを案内すると再び座り込み、まるで行動を促しているように瞑らな瞳で見上げているのである。
「なるほどな…。何だか良く分からねーけど、確かにこの先で何かが俺を呼んでる…ような気がする」
くぅーん…。
シュガーちゃんは違う違う、とでも言いたげに首を横に振った。
「タハハ…やっぱり? んな訳ねーよな、適当言っただけです。
でも、こんな洞窟を見つけときながら黙って引き返す訳にはいかねーよな! なっ!」
ぶるぶるっ!
シュガーちゃんは全力で否定するとでも言いたげに、まるで毛が濡れた時のように激しく全身を振った。
「分かってくれたなら話が早いっ!
まぁ、そんな訳で…お前のご主人様がまだ近くに居るはずだ、そこまでは一人で戻っていってくれや。
俺はちょっくら中を見てくるからよ…へへ」
ばうばうっ! ばうっ!
そう言ってナオキがリードを手離した直後、シュガーちゃんが警告しているように吠えた。
だが、ナオキはそんなシュガーちゃんを尻目に、いかにも好奇心を抑えきれないようなにやけた笑みを浮かべて、薄暗い洞窟の中へと駆け出していった。
勇み足で薄暗い洞窟の中へと身を投じたナオキ。
と、不意を突くような唐突なタイミングで、目の前に眩い光が浮かび上がる…!
「うわ…!?」
咄嗟に額を腕で覆って光を遮るも、ほんの一瞬で目を眩ませられてしまい、その場で硬直して身構える。
「……、あれ? って、ただの明かりかよ…」
辺りの灯火に目が慣れてきたところで、うっすらと薄目に瞼を開くと、洞窟の天井に設置されたカンテラと電源ケーブルが、ずっと先まで続いていた。
ふと背後に振り返って天井に視線を向けると、洞窟の入り口のところに赤く光る、赤外線動体センサーを見つけた。
「こんな洞窟の中で自動点灯だなんて、親切なのかお節介なのか分かりゃしねぇ…。
でも、人の手が入ってるってこたぁ、この洞窟は天然モノじゃねーのか、少し残念だぜ。
……でもちょっと待てよ?」
カンテラの明かりに導かれ、ナオキはゆっくりと歩を進めながら考える。
まだこの洞窟についての情報は乏しかったが、露骨な不自然さを肌で感じ取った瞬間、頭がフル回転して推論を導き出す。
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