第一章・中編

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「今でも電気が通ってんのか、ここは? それに無駄に自動点灯機能が付いてるって事は… いかにも『現在進行形で、この洞窟内で人間が作業を快適に進められるようにする為の設備』…って事なんじゃないのか?」 第一、洞窟をただ通行するだけだったり、調査するだけなら、手持ちのランプやペンライトで事足りるだろう。こんな備え付けの設備は必要無い。 つまり、それはこの洞窟内での、計画的かつ一定期間を見越した活動がある事を示唆していた。 「うっは…! こりゃ天然モノじゃなかろーと、ひょっとしたらひょっとするかも知れねぇ!」 次に考えるのは、一体何をしているのか…である。ここからは単なる可能性の話に過ぎないが、思い当たるフシはいくつか存在した。 第一に、一番現実味がありそうなのが、トンネルの開通工事。 しかし、ここまで道路を引っ張ってくるプランもないうちから、こんな人気の無い山道にトンネルを開通させようなどと、果たして経営者が考えるだろうか? 第二に、金鉱の発掘現場。 だが、企業が大規模な計画を立てて岩山の発掘を始めたともなれば、当然噂にならないはずがない。 例えそれが冗談だとしても、地元の篠更木町でちょっとした町興しが出来そうな規模にはなるだろう。 だが、この世の中には、ヘタしたら貴金属や宝石以上の値が付く埋蔵物もあるものである。 それが、第三候補―――。 「あっ…!」 不意に、ナオキは洞窟の隅に散らばっている小さな欠片を見つけた。 カンテラの光を反射して、淡く輝くその元へと駆け寄ると、指先で摘んで拾い上げた。 それは、ところどころの縁が掛けて、表面の溝の部分に土を被っていたが、本来は六角形で小金色の光沢を放っている金属片に違いない。 「歴史の時間で見たのと一緒だ…! これは『六角貨幣石』ってヤツじゃねーか…!?」 六角形で、貨幣のような光沢があるから六角貨幣石。だが、遥か大昔において、果たして本当に貨幣の代わりにこれが使われたのかどうかは定かではない。 それどころか、今日まで世界の考古学者が調査を続けている過程でも、 『昔は一体どのような使われ方をしたのか』 『どうしてこんな物が世界中の地中に埋蔵されているのか』 『一体どのようにして製造されたものなのか』 …など、具体的な事は解明に辿り付けていない。
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