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「あれは間違いなく、悪役ですわね。そして何とも奇妙な事に、あの方々がアジトと言って向かったこの先に、さっきの男の子の足跡(そくせき)が…」
照らし合わされる手掛かりを元に、露わに暴かれる真実は一つ…!
「クスッ、なるほど? 私をここまで連れてきて何をしたかったかは存じませんが、そのせいで足が付きましたわね」
状況証拠としては有力なものであったので、手の平を口元に当てて得意気に含み笑みを零す彼女は、推理を改めるような事は無かった。
がさがさっ!
ぐるるるる…!
「……!」
今度は反対側だが、全く同じような展開で茂みが揺れる…。
「ひー、わざわざ岩山まで山狩りする事になるなんて、捜査もラクじゃないであります…」
頭にイヤホンと赤外線暗視ゴーグルの機能を搭載したヘルメット、右の片腕には正面にゴム弾の発射口を付けたガントレットを装着し、青のジャケットに白いシャツといった服装の二人組である。
警察とは別に、メダロット社の管轄で存在が認められている独自の治安維持部隊、通称「セレクト隊」…なのだが。
「当直なんだから文句は言わない約束であります! それに、この付近にロボロボ団のアジトがあると、支部から連絡が入っているのであります!」
「本当でありますか? 一気に踏み込んで、一網打尽にするであります!」
「篠更木支部への出張任期を終える間近になって、本部への良い土産が出来そうであります!」
「なんたってロボロボ団が町内を騒がせれば、その分我々の検挙率の水増しになるであります!」
「今日までのロボロボ団は、我々が育てたようなものでありますからね!
今夜は前祝いに一杯飲みに行くでありますよ!」
「俺…この任務が終わったら、地元への(以下略)」
「……」
少女は目の前の光景に既視感のようなものを感じて、同時に胸内に込み上げてくる謎の不快感に目を眩ませた。
「先程の集団と同レベルではありませんの、この人達…」
ばうばうっ! ばうっ!
「うわっ! 何でありますか!?」
「大人しくするであります! 抵抗を止めないと公務執行妨害でタイホするでありますよ!」
だが、権力をカサに持つ分、こっちの方がロボロボ団よりタチが悪いのだった。
足元を徘徊する犬相手に、一丁前の男が抱き合いながらゴム弾の銃口を向けている。
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