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「う、ウチのシュガーちゃんに何をなさるおつもりですの!?
シュガーちゃんもお止しなさい! カム、カァム、ゲッバック!」
ハッハッハッハッ…
少女が飼い犬に指示をすると、ようやくシュガーちゃんは牙を剥き出しにして唸るのを止め、少女の元へと戻っていった。
「君が先程の狂犬をけしかけたでありますね!? 一度保健所で検査して調査結果を提出するであります!」
「ハハ、待つであります…被告人はまだ子供でありますよ。ここは我々セレクト隊が町民を指導して、田舎の民度を少しでも向上させるであります」
「何ですって?」
公務員でもない上にそれ以上の待遇なので、普段からセレクト隊の一部は増長した態度を取っている、と社会的に問題視される事もたびたびあるが…。
これはあまりにも顕著かつ、誇張的な実例だった。
「第一、こんな夜遅くに女の子が山奥で何を遊んでいるのでありますか!?」
「ここは我々が補導して非行少女を更正させるであります!」
「ちょっと待つでありますよ! ひょっとしたらこの少女は強盗犯グループの一員であります!」
「は? 強盗犯?」
話に口を挟ませて貰えないまま、次々に罪状が科せられ、悪性分子に仕立て上げられていく…。
「という訳で、青少年保護法・第26条の2項に基づき、キミは本官とご同行願うであります!」
「ふざけないで下さいますかしら? 天下のセレクト隊だからと言え、横暴が過ぎますわよ!」
正面から見据え、堂々と胸を張って返す刀で言い放つ少女の威圧に、セレクト隊員はたじろいだ。
「て…抵抗するでありますか?」
「だったらどうだと言うの? 強制執行にでも踏み切るおつもり?」
「そ、そこまでの権限はないであります…。今のところは任意同行に同意が無ければ…」
「このようなご挨拶をしておいて、今さら同意とは、面白い冗談ですのね」
少女は見掛けにそぐわぬ妖艶な仕草で、正面から視線を外しつつ口元を手の甲で隠して不敵にも失笑を漏らす。
「ほ、本官達を侮辱するとは! こうなったら他にも手段はあるであります!」
「フフ、なら私もそうさせて頂きますわ。二人纏めて掛かっていらっしゃい!」
少女と、セレクト隊員二人が、距離を取って睨み合いながらそれぞれ腕に巻いたメダロッチを見せるように掲げた。
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