第一章・中編

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「……」 バーナーから激しく噴き出す炎の音をバックに、ナオキは黙々とブルーフレームを箱から出し、立たせていた。 「メダロッチだけはどこを探しても、見当たらなかった…。 最悪でも、メダロットと意志が通じさえすりゃあ、後は任せるしかねぇ…」 メダロッチは、メダロットを電子データ化して圧縮携帯するツールというだけではなく、ロボトル中において迅速に狂い無くメダロッターの指示を伝達する為の通信機としての機能も兼ねているのだ。 「幸いだったのは、組み立て済みって事だな…。普通にキットを一からバラしてたんじゃ、絶対に間に合わねぇ。 そんで、一番肝心なメダルだけど…」 ナオキは固く握り締めた手を開き、手中に掴んでいた物にもう一度視線を向ける。 メダルの縁にこびり付いていた泥は机の角に強く擦り付けて削ぎ落としたので、メダロットへの装着には支障は無いと思うが、表面の模様の部分に付いた泥は何度爪で引っ掻いても取れなかった。 「何のメダルかも分からねーままで、本当にちゃんと戦えるのか…? パーツの相性とかも…いや、この際『うつ』『ねらいうち』の得意な射撃タイプだってんなら、それだけでいいんだ…!」 メダルの持つ要素には、レベル・絵柄によるランク・属性・得意な行動の熟練度・性格などの様々な項目がある。 しかし、メダロッチが無く、絵柄を見ておおよその判別をする事も出来ない以上、ナオキはこの謎のメダルに全てを託す他になかった。 「よし! メダロット起動っ…!」 頭パーツの首元のカバーを外すと、ティンペットのメダル装着口が露わになる。 ナオキは手にしたメダルを六角形の溝の中へと嵌め込み、ピンを戻して固定した…! 「そこまでだロボ! 今度こそ逃がさないロボよ!」 ガキンッと鈍い音を立ててチェーンが焼き切れると、扉を蹴り開けながらそのままの勢いでロボロボ団が雪崩れ込んできた。 「やいロボロボ団! お前らの企みもここまでだぜッ!」 「あーっ! 我々が大事に保管していたパーツがーロボ! 「こんなにメチャクチャにしてたら、高く買い取って貰えなくなるロボよ!」 「許せんロボ! ゴウカザル、コイツを引っ捕らえてお仕置きしてやるのだロボ!」 「そうはさせるかってんだ! おい、俺とデュエ…じゃなくてロボトルしろよ!」 「何っ!? 受けて立つロボよ!」
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