第一章・後編

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射撃パーツの場合は、アクティブライン上から直接狙いを定めての射撃を行う場合がほとんどだ。 構えて、狙い、発射する…それだけの動作を費やしても、パーツに見合ったある程度の弾速と命中性は保証されているから、という仕様だが…。 ゴウカザルが振り返って一瞥すると、ブルーフレームは既にロックオンを済ませている程に、あらゆる動作が早かったのだ。 ブルーフレームの うつ攻撃 ライフル! ゴウカザルに 直撃した! ゴウカザルの 脚部パーツに45ダメージ! (脚部装甲 機能停止 -45 0/45) 『ロボーーーッ!?』 ライフルの銃口から甲高い音が響いたかと思った次の瞬間には、ゴウカザルは地面に前のめりに倒れ込み、遅れて脚部パーツが爆発して外装が弾け飛んだ。 「なぐる」格闘行動の後だったため、防御行動を取れないという制約はあったものの、ブルーフレームは単なる「うつ」行動で相手のパーツを破壊してみせたのである。 普通であれば、推進の追加ダメージの乗った「がむしゃら」格闘か、光学射撃の「レーザー・ビーム」でも直撃させない事には、そうは目に掛かれない光景である。 「あ、アイツは一体何をしたロボ!? とにかくあの右腕パーツは危険ロボ、頭パーツを使って強制的に封じてやるロボよ!」 『ロ、ロボー……』 脚部パーツの補助動力を失い、錘と化した装甲を引き摺るようにしながらも、ゴウカザルは懸命にコマンドラインから折り返す。 一方、あれほどの強力な一撃を放った右腕パーツは冷却に掛かる放熱時間が長いらしく、ブルーフレームは大事そうに小脇にライフルを抱えながら悠々と戻って来る。 「……あ」 ナオキは目の前の光景に言葉を失い、呆然と立ち尽くしていた。 『ポンコツメダロットとは、随分な言い草だな』 「お、お前…」 視線は合わせてくれないままに再びコマンドラインから身を翻していったが、今のブルーフレームにはハッキリと意志があるようだ。 駆け出す動作も、先程までと打って変わってキビキビとしている。 今の力こそが、ブルーフレームの本当の実力に違いない…! 『ならば前述の評価は撤回して貰おうか…。 契約主(クライアント)の納得を得られなくては、任務に支障が生じる…だからこそ今一度見せてやろう、傭兵のやり方というものをな…!』 「傭兵の…やり方…!」 去り際にそう言い放ち、再びブルーフレームはフィールドを疾走する。
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