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「はー…っ、凄ぇや、メダロット」
座り込んだまま身体を後ろに倒すと、少し疲れた目をテレビから背ける。
天井を仰ぎながら、先程の週刊メダロットの内容をぼんやりと回想していた。
「P0型かぁ…いいよな、ピーゼロフレーム系列は。
今じゃ旧式だけど、基本的なパーツがコンパクトに纏まってる。くーっ、憧れちまうよ」
P0‐という型番の機体は多数バリエーションが存在していて、そのうち一機は全国ロボトル大会にて輝かしい優勝を果たしている。
今でこそ最新鋭機の人気に押されているが、知る人ぞ知る逸品なはずだ。
……あまりにメダロットに興味を向けてしまっているおかげで、こういう蘊蓄ばっかり頭にこびりついて離れない。
篠更木(さざらき)町に住む…「獅塚(しづか)ナオキ」にとっては、メダロットについての知識は聞きかじりのものに過ぎなかった。
そこはまぁ、家庭の事情と言うか…色々な要因があって、彼はまだメダロッターではなかったのだ。
「うぅ、新型のCMやってるよ…! うわぁ、高っけぇ…高すぎて…。貯金考えよっかな」
メダロットについての興味・意欲は十分にあった。
メダロッターにとってのマストアイテム・腕時計型多機能携帯端末、「メダロッチ」を腕に巻き、颯爽とパートナーに指示を送る…!
最近は時と場所を選ばず、いつでもイメージトレーニングを欠かさずに行っている。
それゆえに、学校の三者面談を終えたその日に、家族会議が開かれたのは記憶に新しい。
つまりは、個人の問題であったが…両親は一人前のメダロッターの証、メダロッチを持つ事を許してくれなかったのである。
「少しずつ小遣いを貯めてさ…、こっそり買えばきっとバレやしない。
どうせバレても自分の金で買ったならこっちのもんだ」
なんたらの皮算用、机上の空論…とは良く言ったもので、ナオキには計画性がなかった。
自分の唯一無二のパートナーを持っていないにしろ、幼い頃からメダロットに触れられているという、今の環境にある程度満たされていたから…かも知れない。
「てめぇッ! そいつはどういう言い草だ!?」
「聞こえなかったか? もう一度耳掻っぽじって聞きやがれ!」
「聞くまでもねぇやい、その毎度ながらの減らず口は撤回してやるってんだ!」
「ハッ、いつもの言い出しっぺはどっちだと思ってやがる…ロボトルだッ! 表に出ろぃ!」
「望むところよ!」
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