2519人が本棚に入れています
本棚に追加
/487ページ
大学は、私の実家から電車で15駅
乗り換えがない駅付近にある大学で、家
を出てから最短で30分くらいで到着する位置にある
特段田舎というわけでもないけど、特段都会というわけでもない、そんな中途半端な街の中にある大学
今年で、通い始めて2年目になるこの大学。私は結構気に入っている
正門を入ると、まず目に入るのが大きな講堂
ここでは、時折吹奏楽部とか、ジャズサークルがコンサートのようなものをしている
少し歩みを進めると、講堂塔がいくつも続き、しばらくすると、野球やサッカーのグラウンドが見えてくる
そのグラウンドを横目に見ながら、さらに歩きすすめていくと、そこには色々なサークルの部室塔が集まっているところがある。その付近には食堂や学生会館などの建物があるから、いつもたくさん人がいる
そして、この時期になると、さらにこの付近での人の数は多くなるらしい
なぜなら、この場所が大学構内にもかかわらず、大きな桜の木が何本も立っているところで、ちょっとした公園みたいなところになっているからだ
毎年この時期になると、いつもはあまり大学に来ないような人もこの場所に来るから通称『返り咲きの楽園』と呼ばれていると、去年まで入っていたジャズサークルの先輩に聞いたのを覚えている
「ちょっと、早く来すぎたかな…」
『今日、花見がこの場所であるから』
それだけをあの娘から聞いただけで、特に時間の指定を受けていなかった私は、その場所で立ち往生してしまった
…よく考えれば私も私だ。ちゃんと時間を聞いておけばよかった
あの娘の適当な性格なんて、もう随分前から分かっていることなのに
やっちゃたなぁ。よく考えたら、絶対早すぎだよ、私…
「あ…」
そんな声が自然と自分の口から漏れたかと思ったら
さっきまで『やっちゃた』とか『早すぎた』とか考えていた私の脳は、そんなどうでもいいことを考えることをすっかり放棄してしまい
ただ、ひとつ
目の前で、せっせと何かの準備をしている人を見る
それだけに機能を全部持っていかれてしまった
最初のコメントを投稿しよう!