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こういうときは、人間なんでも悪いほうに悪いほうに考えるものらしくて
入学式って、もし出席しなかったらどうなるのだろう、とか、もし途中から出席できたとしても入学式に遅刻したという何らかのペナルティを負わされるのではないか、とか
半分泣きそうになりながら、頭の中でそんなことを唱え始めてしまう
入学取り消し
考えたくないけど、ふと頭にそんな言葉が浮かんだときには、流石に本当に泣きそうになってしまった
偏差値はそれほど高い大学ではないけれど、現役で合格するために、それなりに頑張って入った大学だから、絶対にそんなことにはなりたくなかった
何より、そんな理由で入学できなかったとしたら、お姉ちゃんや応援してくれたお母さんやお父さんに顔向けができないと思ったから
…今、考えると入学式に出なかったことで入学が取り消しになることなんて普通ない事なんだろうけど
それは前述の通り、このときは心の底から焦っていて
そして、心全体が不安に覆いつくされてしまいそうな感覚に襲われていたので、冷静になることが出来なかった
「あの…」
そんな心境だったからだろうか
心の中で、無意識にそれを求めていたからなのだろうか
その声が、私にかけられたものだと認識したときには、ものすごくホッとした覚えがある
「君、どうかした?」
振り向くと、そこに立っていたのは
一人の男の人だった
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