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「いや…なんか、すごくオドオドしてたから…」
とか言いながらも、その男の人は何故か自分がオロオロした様子を見せた
気にならない程度のくせっ毛、それほど高くない身長
パッとしないといっては失礼なんだろうけど、どこにでもいそうな平凡な顔をしている
それが彼に対する、私の第一印象だった
「あの…私、新入生で、もうすぐ入学式が始まるんですけど、道に迷ってしまって…」
今、自分が置かれている状況を包み隠さず話すと、その男の人は急に納得したような表情になり
「ああ、やっぱり…」
そうつぶやいた
「案内してあげるよ」
「え?」
春一番が鼓膜を震わせた
私は、そのせいで今、彼が言った言葉が何だったのかを聞き取ることができなかった
それを察したのか、彼はどこかぎこちなくだけど、くすっと笑うと
「案内、してあげる。ついてきなよ」
今度は、はっきりと聞き取れるように、はっきりと快活な口調でそう言った
「あ、はい!」
私は、それにつられるようにはっきりとした口調で返事した
ありがとうございます
その言葉をかけようとするときには、目の前の彼は私に背を向けて早足で歩きだしていて
私も、やはり余裕がなかったせいか、何も言えずに
言おうとしたその言葉を喉の奥に引っ込めて。彼の背中を追った
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