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実際に時間にすると、それは5分くらいだっただろう
だけど、私にとっては冗談抜きで10秒くらいに感じられたその時間はあっという間に過ぎ
気がつくと、入学式の会場となっている大きな建物に到着していた
「ほら、着いたよ」
彼が振り向いたとき、私は何故か彼と目を合わせるのが怖くなってしまって
「あ、ありがとうございます!」
彼から目をそらせるように、大きな声で謝辞を述べながら、深く深くお辞儀をした
しばらく頭が上がらなかった
顔が、なぜか熱かった。どきんどきんと、胸のあたりから何かが聞こえてくるのを感じていた
「それじゃあね」
「あ、あのっ!」
立ち去ろうとする彼を、私は無意識のうちに呼び止めていた
思えば、高校時代は女子高に通っていた私にとって、高校時代の先生とお父さんと親戚の伯父さん以外の異性と面と向かって話すのは中学校以来で
それほど異性に免疫があるわけではない私が、なぜこんな行動をとって出たのか
とって出ることができたのか
「ん?」
振り向いた彼は、ほんの少しだけ、だじろいだように見えた
案内しただけの人間に、いきなり呼び止められて、変な女だと思われたのだろうか。そう考えると、彼のそんな態度に心がチクリと痛んだ
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