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それが
今日、この日
私にとって、大切で大切で、重大なこの日
彼との関係を、一歩前進させるチャンスが、訪れたのは、真菜という棚から落ちてきたボタモチだったのかもしれない
真菜と仲良くなったのは、2年生に進級してから
グループを組んで実習をするという講義をお互いが受講していて、そこで彼女とたまたま同じグループになって
いつの間にか仲良くなっていた。仲良くなったきっかけは覚えていないけど
だけど、今日はそのことに心から感謝しなくちゃ!
「あ、あの…」
「あ、ナギぃ~!!」
十年分の勇気を振り絞って、その男の人にかけたつもりの私の言葉が
聞きなれた、よく通る声にかき消された
「真菜」
「早いねぇ、ナギ。めっちゃ気合い入ってるじゃん!」
アップテンポ、かつマシンガンな彼女のトークにたじろぐしかない私は
「そ、そう?」
そんなあいまいなリアクションしかできない
「うん。だってそのワンピ、この間一緒に買いにいったやつでしょ?今日、ついにデビューっすか!?」
そ、そんな生々しいこと、若竹先輩の前で言わないでよ!なんか恥ずかしいじゃない!
おそらく顔は真っ赤になっているだろう。その顔のまま、おそるおそる後ろを振り向こうとすると
その前に、その方向からは、それこそ毎日意識して聞いていた、あの低くて低調子な声で
「おい、頼んだものは買ってきてくれたのか?」
真菜に向けられた言葉が、私の鼓膜を震わせた
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