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まるで、私がそこにいないかのように会話している二人
それは心からその時間を楽しんでいるように見えた
そして、それは私にとっては、居心地の悪い時間だということは言うまでもなくて
「あ、あの…真菜?」
満面の笑顔で会話を楽しむ、友達の水を差すのは少し気が引けるけれど
二人の間に割って入って、真菜と目を合わせる
真菜は、ようやく私に気づいてくれると「ごめんごめん」と軽く笑ってから
「きゃっ。ちょっ、真菜」
私の両肩をつかんで、若竹先輩のほうに差し出すように後ろから押しながら言った
「先輩、この娘、私の友達で内山田渚って言います」
は、恥ずかしい…
先輩と、目があわせられない
目が泳いでいるのがわかる。バタフライしているのがわかる
顔の温度が急激に上がっているのがわかる。今ならお湯も沸かせそうだ
で、でも自己紹介くらいはしなくちゃ
だけど、自己紹介って何したらいいの?
一度は会ってるんだから「はじめまして」はおかしいよね。でも、話したこともないし、面と向かって話すのはあの時以来だから、初対面でもおかしくないのか…
ていうか…
先輩。私のこと覚えててくれてるのかな?
「う、内山田渚です…。よ、よろしくお願いします…」
そんな淡い期待をのせながら私は何とか声を絞り出した
ゆっくりと顔を上げる、両目は開けられない。片目をつむりながら、おそるおそる彼の顔をしたから覗き込む
「ああ、よろしくね…」
先輩は、私から目をそらせながら、そうつぶやいた
……あれ?
なんか、想像してたよりリアクション薄すぎない?
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