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「さようなら。田邊剛士さん。」
叶え屋は、そのまま何もなかったかのように、田邊の部屋から出ると、カウントダウンを始める。
「5…4…3…2…1…0…。0時ちょうど。悪魔の願いは叶った…。」
叶え屋は、暗闇の中を歩く。
家に着くと、黒猫が叶え屋に気付き、ゴロゴロと喉を鳴らしながらすり寄って来た。
「ああ、起こしてしまったかい?ただいま。今、ストーブを点けるよ。」
「ニャー。」
「ねえ。君は俺のやっている事をどう思う?ホントに正しいのは何だろうね?猫の君に聞くのは間違っているかな。俺は、闇の中でしか生きられない。叶え屋は、正義か悪か…俺には分からないんだ。」
「ニャー?」
「…ああ、そうだ。君に名前を付けようね。俺とは真逆の、君の黒色がよく映える光…ムーンなんてどう?」
「ニャー!」
「気に入ってくれて良かったよ。さあ、温かいミルクでも、一緒に飲もうか。」
ここは、田邊剛士の部屋。
警察の車が外に沢山止まり、人集りが出来ている。
「またか…。」
「叶え屋…またあいつか。」
「若槻、お前どう思う?」
「何がですか?」
「叶え屋だよ。被害者のケータイや家の電話でわざわざ連絡をし、現場に着けば姿はない。どう思う?」
「俺には、怒りしかありません。親父も追った叶え屋は、正義なんかじゃない。被害者がどんな人間であろうと、殺せばそれは罪。」
「そうだな…。」
秋登は、遺体のあった場所を見つめながら、拳を握って怒りに耐えていた…。
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