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朝日が昇る。
常に閉め切られた黒いカーテンの隙間から、陽の光が差し込む。
「ニャー。」
「ん…?ああ、ムーン。おはよう。朝になったんだね。」
「ニャー。」
「朝食にしようか…と思ったけど、朝からなんだか呼ばれているんだ。君は先に食べてて?今、ミルクを温めて、ウィンナーを刻むから。キャットフードを買ってこないとね。」
叶え屋は、黒猫ムーンの朝食を用意を済ませると、いつもの服に着替えてコートを着て、霧が出ている寒空の下を歩く。
しばらく歩くと、この真冬の寒い中、道路に寝転がる人影を見つける。
「あの人か…。」
叶え屋は、その人物に近づく。
顔には殴られた痕や、口の端は切れて血が出ている。
「ねえ、お兄さん。こんな所で寝てると死んじゃうよ?起きて。」
「うっ…。」
男は、痛そうに起き上がると、叶え屋を見た。
「…別に、起こさなくても良かったのに。このまま死ねば、借金取りから逃げられるし、痛い思いなんかしなくて済んだ。通りがかる奴らは、みんな見てみない振りしてるのに、なんであんたは、俺に声掛けた?」
「なんでって…あんたの願いが俺を呼んだから…。」
「はっ?」
「俺は叶え屋。あんたの願いを叶えてやるよ。現在無職で年齢は25歳の辻本恭平(つじもときょうへい)さん?借金から逃げたくないか?」
「なんで俺の名前…。」
「叶え屋は、なんでも知ってるのさ。」
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