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叶え屋は、今日子の夫が通う会社へ来ていた。
黒ずくめの服ではかえって目立つので、途中公園のトイレで、黒いコートを脱ぎ、スーツと白いYシャツに、青いネクタイとブーツは革靴へ履き替え、会社の最寄り駅のコインロッカーへ預けた。
堂々と中へ入り、偽造した証明書を首から下げ、中へ入る。
今日子の夫である三沢宰を探るため、人目にあまり付かないよう、防犯カメラの死角を利用しつつ、社内を移動する。
「あっ…いた。あれが、三沢宰(みさわおさむ)か。」
宰は、仕事中にも関わらず、女子社員と楽しそうに話し、給湯室へこっそり消えた。
「…分かり易いなあ。」
叶え屋は、笑いを堪えながら、二人を追った。
「三沢さん、ダメですよ。ここ会社。」
「分かっているよ、こんな所を見られたら、僕はクビだからね。続きは今夜…。」
「こんな毎日…奥さんにバレても知らないから。」
「誘ってきたのは君だよ?悠華。」
「悠華…磯崎悠華(いそざきゆうか)…ふーん。」
叶え屋は、その場を離れて、そそくさと会社を出ると、また路地裏へ戻る。
勿論、いつものように黒ずくめの姿で、路地裏に立っていた。
「さあ、悪魔の願いを叶えてやろう…。」
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