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都内某所
とあるマンションの一室
明かりを灯すことの無い役立たずな蛍光灯の代わりに、デスクの上に置かれたノートパソコンの必要以上に明るい光だけが、その閉塞感のある室内を少しだけ明るく照らし出す。
パソコンの前に座る、見るからに暗い雰囲気の青年は、つい先程まで参加していたチャットに書き込まれた『名前』を思い出し、ふう、と一度だけ重い溜め息を吐く。
「佐々原……」
青年はそう呟きながら、パソコンの後ろの本棚から何かの付箋が沢山付けられた辞書を取り出し、特に何かの単語の意味を調べるでもなく、ただひたすらペラペラとページを捲る。
「事件……」
まるで学生がシャープペンシルを指でクルクルと回すように、若い女性が毛先を弄くるように、彼は物思いに耽りながら意味も無く薄っぺらい紙を弾いていく。
「犯人……」
何の答えも見出せぬまま、彼は目を細めて辞書を閉じ、続けてノートパソコンを閉じて室内の明かりを消し去った。
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