第一章・探偵と不幸な男

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  9月4日 02:58 東京都 小金井市 小金井警察署 取調室 「お前がやったんだろ!」 暗く狭い室内に、そんな怒声が響く。 椅子に座る眼鏡をかけた気弱そうな青年の周りを、取り囲むように立つ三人の刑事の姿。 一様にベテラン刑事という風の暗い色のスーツを着て、また一様に煙草臭い。 「や……やってませんってばぁ……」 その少し女々しい口調で話す青年の様子を、部屋の隅の椅子に座っている警官が注意深く見つめ、目の前のテーブルに置いた紙に何かを書き記す。 更に、彼らからは見えない隣の部屋では、ガラス越しに彼らの様子を見つめる四・五人の刑事の姿があった。 「さっさと吐け! お前がやったんだろ!」   「だから……違いますよぉ~!」 こんなやり取りを、彼らは既に五時間近く続けていた。  
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