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静寂に包まれた公園に、自転車の前方に取り付けられたライト特有のモーター音が響き渡る。
公園の中にも電灯はあるものの、間隔が開いていることや電球部分が高いことで、殆どその役割を果たせていない。
「嫌だなぁ……」
この公園を通り抜けずに、駅の方へと抜ける道は幾つかある。
しかし、この広大な公園を避けることで、どれほど遠回りになるか、彼はそれを嫌という程に理解していた。
普段であれば、この時間でもちらほらと人の姿が確認できるのだが、今日に限っては誰とも擦れ違うことがない。
「……!」
と、自転車のライトが、突如として前方の何かを照らし出す。
急ブレーキをかけた両手。同時に、キキーッという高い音が周囲に響き渡る。
一瞬だけ浮いた後輪を気にしながらも、純一は自転車を降り、ライトが照らすその『何か』をまじまじと見つめた。
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