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「おい、君ィ!」
「ひぃっ!」
突然の声に驚き、純一は危うく自転車ごと倒れそうになる。
体勢を立て直しながら純一が振り返ると、明らかにジョギング中といった様子の緑のジャージ姿の男性が立っている。
「今、紙飛行機を投げただろう。ちゃんと取りに行きなさい」
「いや、あの……」
男性は首の後ろに回したタオルで汗を拭い、あたふたする純一に詰め寄る。
「ちゃんと見ていたんだからね。誤魔化そうとしたって無駄だよ」
そう言いながら、男性は紙飛行機の落ちている池に目を向ける。
「ん……何だあれは!」
「あ、あの……!」
段々と青ざめていく、男性の表情。彼は紙飛行機と純一の顔を交互に見つめながら、ゆっくりと後退りする。
「おま……まさか……例の!」
「え? いや! 違いますよ!?」
その時、必死に誤解を解こうとする純一の後ろから、また別の足音が聴こえてきた。
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