第一章・探偵と不幸な男

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  純一が首だけを動かして後ろを見ると、可愛らしい犬を連れた若い男女が、不思議そうな顔を此方に向けながらゆっくりと歩いてくる。   男の方はやけに筋肉質だが、女の方は逆に華奢でか弱そうに見える。   「おい、あんたらどうかしたのか?」   怯えた様子の男性を見つめ、筋肉質の男が問い掛けると、ジャージ姿の彼は震えながら池の方を指差した。   筋肉質の男は何の疑いも持たず、指し示された方向へと視線を移動させる。   「……? なっ……!」   「どうしたの?」   「馬鹿! 見んな!」   筋肉質の男が女性の細い腕を引き、自分の後方へと下がらせる。彼は額に汗を滲ませながらも、純一とジャージ姿の男性とを交互に睨み付けた。 「誰がやった……」  「いや、だから僕は……」 「お前か!」   筋肉質の男は純一に狙いを定め、じりじりと詰め寄ってくる。 「ええッ! 待って下さいよ!」   「しらばっくれんな!」   気付けば純一の後ろにいるジャージ姿の男性は、震えながら純一の方を指差していた。  
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