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純一が首だけを動かして後ろを見ると、可愛らしい犬を連れた若い男女が、不思議そうな顔を此方に向けながらゆっくりと歩いてくる。
男の方はやけに筋肉質だが、女の方は逆に華奢でか弱そうに見える。
「おい、あんたらどうかしたのか?」
怯えた様子の男性を見つめ、筋肉質の男が問い掛けると、ジャージ姿の彼は震えながら池の方を指差した。
筋肉質の男は何の疑いも持たず、指し示された方向へと視線を移動させる。
「……? なっ……!」
「どうしたの?」
「馬鹿! 見んな!」
筋肉質の男が女性の細い腕を引き、自分の後方へと下がらせる。彼は額に汗を滲ませながらも、純一とジャージ姿の男性とを交互に睨み付けた。
「誰がやった……」
「いや、だから僕は……」
「お前か!」
筋肉質の男は純一に狙いを定め、じりじりと詰め寄ってくる。
「ええッ! 待って下さいよ!」
「しらばっくれんな!」
気付けば純一の後ろにいるジャージ姿の男性は、震えながら純一の方を指差していた。
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