序章・探偵と傍観者

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  某日 19:05 東京都 某所 闇夜に映える月明かりに照らされた、プール付きの豪邸。 つい先日の事、この豪邸で働く使用人の一人が殺された。この日も、夕方までは家の前に何台かの警察車両が停まり、警官達が邸宅の内外を慌ただしく往来していた。 そんな曰く付きの屋敷の一室で、明かりも点けずに何か作業をしている男が、一人……。 「ハァ……ハァ……」 大きな本棚が並べられた暗い部屋の床にペンライトの明かりを照らし、何かを探すその男は、荒い息遣いに不気味な唸り声を織り交ぜながら部屋の奥へと進んでいく。 「うぅ……何処だ……早く見付けないと」 と、男が額の汗を拭って顔を上げた瞬間、室内のパソコンが突如として起動する。 男は「ヒッ!」と声を上げながら後退りし、煌々と輝くパソコンの明かりに照らされた室内を見渡してみるが、室内に自分以外の人影は確認できなかった。  
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