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キーボードを叩いている訳でもないというのに、真っ白なパソコンの画面には、文字が次々と現れては規則正しく整列する。
男は恐る恐るパソコンに近付き、明かりに目を慣らしながらもその文字を読み始めた。
『あなたが 犯人ですね』
「は? はは、何だこれは……」
男は余裕の無い笑みを浮かべながら、パソコンのキーボードを手当たり次第に強く叩いてみるが、煌々と輝くそれは、電源が落ちるどころか、表示された文章すら消える様子は見られない。
それでも男は笑みを浮かべたまま、焦点の定まらぬ瞳でパソコンの画面を凝視する。
これは罠だ。と、男は確信していた。
使用人の殺害現場であるこの部屋に犯人が戻ると踏み、警察か誰かがパソコンに細工をしたのだ。
誰かがパソコンに近付いたら、パソコンが勝手に起動するように……。
「こうやって、自首に追い込む気だろう。ふふ……馬鹿め」
男は一度だけ大きな深呼吸をした後、パソコンの明かりを頼りにまた何かを探し始めた。
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