序章・探偵と傍観者

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  不意にパソコンから発せられた『ピッ』という高い音に気付き、男は探すことを中断し、再びパソコンの画面へと視線を注ぐ。そこには、新たな文字が現れていた。 『あなたが 犯人ですね』 『――――さん』 「なッ……!?」 男は驚愕し、混乱する頭を必死に落ち着かせようとしながらも、パソコンの前に膝を着く。 彼が驚くのも無理は無い。 パソコンに打ち込まれた最後の一文には、はっきりと犯人を示す名前が書かれている。そして、それは紛れもなく、彼自身の名前だったのだ。 これは罠だ。と確信していたその男も、名前が出たことによってその考えを改める。 このパソコンの向こうにいる相手は、彼が犯人であることを確信しているのだ。 「しょ……証拠が無いじゃないか! 私が使用人を殺した証拠がぁ! あるって言うのかね!」 動揺を隠せないまま、男は返答の無いパソコンに向かって吠え続けた。  
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